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2022-07-04

ひと月の和菓子【2022文月】

 

20220701

今月のテーマ ~万葉集 七夕伝説~

一年に一度逢える。心から湧き上がる喜び。

彦星は舟を出し、織姫星は天の川の川岸で今か今かと待ちわびる。

 

~七夕伝説~

織姫星

我が背子に うら恋ひ居れば 天の川 夜舟漕ぐなる 楫の音聞こゆ

詠み人 柿本人麻呂

意味:私の夫を恋しく思っていたら、天の川を漕ぎ渡る舟の楫の音が聞こえる。まもなく逢えるという嬉しい気持ち。心高鳴る織姫星をイメージしてみました。

ラズベリーの甘酸っぱい錦玉羹に木の芽を添えました。

原材料:砂糖 ラズベリー ワイルドブルーベリー 国産レモン 寒天 木の芽 /金箔銀箔 

 

比故保思 ひこぼし

年にありて 一夜妹に逢ふ 比故保思も 我にまさりて 思ふらめやも

詠み人知らず

意味:一年に一夜だけ妻である私に逢う彦星も私以上に強く私を思っているでしょうか。不安に思う女ごころが詠まれています。

万葉集に彦星は、「牽牛」「男星」「比故保思」などと詠まれています。なぜ、比故保思の字を当てたのでしょう…。気になるところです。

梅酒の効いた錦玉羹にミントとバタフライピーの錦玉羹を添えて、白あんを入れ茶きん絞りに仕上げました。冷たく冷やしてお召し上がりください。

ミントの葉の爽快感が、比故保思のお気持ちですからご安心くださいませ。

原材料:大手芒 砂糖 梅酒 ミント バタフライピー 金箔銀箔

佐藤里恵作

 

天の衣 あまのころも

七夕まつりは、もともと日本の神事であった「棚機(たなばた)」と、織姫と彦星の伝説と、奈良時代に中国から伝来した「乞巧奠(きっこうでん)」という行事が合わさったものと言われております。

「棚機」とは古い日本の禊の行事で、穢れのない乙女が清い水辺にある機屋にこもり、神様のために心を込めて着物を織り棚に供え、神様を迎えて、豊作を祈り、無病息災を祈る行事でした。その時に使われたのが「棚機」という織り機です。この行事はやがて仏教の伝来によりお盆を迎える準備として7月7日の夜に行われるようになりました。

「七夕」を「たなばた」と当て字で読むのはここからきているとも言われています。神様のために心を込めて乙女が織った着物をイメージしてみました。

赤えんどう入りこしあんの求肥のお餅です。

原材料:北海道小豆 砂糖 赤えんどう 白玉粉 片栗粉 藻塩 

 

さざれ石

さざれ石とは、細かい石・小石のこと。それを、星屑の集まった流れ天の川に思いを寄せて、七夕の日「さざれ石」と言われれば、天の川と連想する美しい文化です。

信濃なる 千曲の川の さざれ石(し)も 君し踏みてば 玉と拾はむ

詠み人知らず

意味:信濃の千曲川の小石でさえ、あなたが踏まれた石ならば、玉と思って拾います。

この歌は、千曲川を詠んだ歌ですが、天の川の岸の織姫と重なって、織姫が拾った宝物の小石はどんなであったろうとイメージしてみました。

黒糖生姜のねき餡入りの黒胡麻こなし製です

原材料:大手芒 砂糖 黒胡麻 黒糖 北海道小豆 生姜 ササニシキ米粉 羽二重粉 藻塩

 

万葉集 七夕伝説

中国から七夕伝説が伝わった奈良時代、万葉集には130首以上の七夕にまつわる歌が詠まれています。

どちらが天の川を渡って会いに行くの?と疑問に思いましたが、万葉集には彦星から説が有力です。妻問婚と言って、男性が妻の住むところに通う時代ということもあり、日本では男性が舟を出す。ことになったのでしょう。

彦星と織姫星の逢瀬を自分自身と重ね合わせ、ふたりが今年も無事に会えますようにと願うのは、万葉の時代も、今も、変わらないようです。万葉集の中の七夕を詠んだ歌を、少し見てみましょう。

 

霞立つ 天の川原に君待つと い行き帰るに 裳(も)の裾(すそ)濡れぬ   …山上憶良

意味:霞が立つ、天の川原であなた様がいらっしゃるのを待って、川原を行ったり来たりして、裳の裾が濡れてしまいました。織姫星のそわそわする気持ちを詠んでいます。

 

天の川 楫(かじ)の音聞こゆ 彦星と織女(たなばたつめ)と 今宵逢ふらしも  …柿本人麻呂

意味:今夜は七夕の夜なんですね。楫を漕いでいるのは彦星です。彦星が天の川を舟で渡って織姫星に逢いにゆくのですね。今年は逢えるようですね。と希望を感じさせる歌です。楫を漕いでいる音が聞こえてきそうです。

 

青波に 袖さへ濡れて 漕ぐ舟の かし振るほとに さ夜更けなむか  …大伴家持

意味:青波に着物の袖さえ濡らしながら漕ぐ船を、杭を振り下ろして水中に立て、つなぎとめている間にも夜が更けてしまうだろうか。時間が足りないと焦る気持ちを星に託しています。

 

逢いたくてソワソワしている、逢えるという希望と、不思議と一瞬、不安がよぎる。そんなところも、今と変わらないですね。

時代が変わっても、愛おしく思う気持ちの本質はやはり同じですね。

古人も、せつない気持ちを夜空に打ち明けてなぐさめられていた特別な日。七月七日七夕の夜。ということなのでしょう。みんな一緒ね。と、ちょっと心強い気持ちになったりします。

 

みなさんは、誰を思って、七夕の夜、空を見上げますか?

きっと素直に願えば、キラキラ金銀お星さまが降ってきて、その願いは叶うでしょう。

 

20220702

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